【飯田信義さんインタビューVol.3】切り絵作家 飯田信義の「楽しむ哲学」に触れて

流山切り絵

流山本町に足を運んだ人は、お店の一角、ギャラリー、民家の軒先などで、切り絵や切り絵行灯を目にしたことがあると思います。
そこには世界にたった一つしかない、切り絵で描かれた流山の風景が描かれています。
自分の「好き・得意」がまちのためになっていることを体現している、流山在住の切り絵作家飯田信義さんにmachiminスタッフがインタビューしました。

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文 手塚純子(コミュニティデザイナー、machimin代表)

飯田さんとの交流は、machiminをスタートすることに決まった頃、流山本町で事業を行うからには「切り絵行灯を看板としてmachimin店前に置きたい」と製作を依頼したのがはじまりでした。

完成した行灯を受け取る際、飯田さんと長谷部さんは、毛布で丁寧に包まれた状態で行灯を運んできてくださいました。そして、その毛布を「じゃーん!」と取り外し、完成品を披露してくださったのです。私は、出来上がった行灯にももちろん感激しましたが、あの時のお二人の笑顔が何よりも印象的でした。本当にお二人が楽しんで行灯を作っていらっしゃること、この納品の瞬間をとても楽しみにしていることがひしひしと伝わってきました。

その後も何度か、飯田さんとお話する機会があり、昔の流山の様子や、ご自身のこれまで行ってきた活動に関して色々と伺ってきましたが、切り絵に対する“想い”に直接触れたのは今回が初めてでした。そこには飯田さんが長い間、切り絵の創作活動を続けるための「楽しむ哲学」があり、私の活動にも通じるものがあるととても参考になりました。

飯田さんの制作の原動力とは

1回も、やめたいと思ったことはない

インタビュー中、あまりに穏やかに話す切り絵作家・飯田信義さんを見て、26年も切り絵を作り続けている中で、やめたくなったことやスランプ、周囲との関係で悩んだことはないのでしょうかと質問したところ、このように答えて下さいました。

今までより少し声が大きくなったように感じたので、ここはきっと、飯田さんがとても大事にされている部分なのでしょう。

座り直して姿勢を正し、丁寧に説明を続けてくださいました。

ー 調子が良い時は朝から晩までずっと切り絵を作っている。でも当然気が乗らない時もあるから、そんな時は2、3週間作らないこともある。

ー やりたいことをやる、やりたくないことをやらない。

ー 作っている時は、たまに裏返したり、光に透かしたりしながら出来上がりを確認し、「完成に近づいている」ということを自分でも実感していく。

ー これまでたくさんの方に納品してきたが、皆さん必ず喜んでくれた。今回もきっと、とても嬉しそうに受け取ってくれる、その様子を思い浮かべながら作り進める。

作品を完成に近づけていく楽しさ、相手が喜んでくれる嬉しさ、これも作ってみたいなと湧き上がるワクワクする気持ちが、飯田さんの原動力のようです。飯田さんからは、無理をしたり強がったりしている様子が感じられません。誰かに求められるからではなく、飯田さんご自身の「好きだから」「楽しいから」「喜んでほしいから」という気持ちを一番大切にする、そう決めていらっしゃることにも大変共感しました。

ー 依頼主には納期の約束はせず“自分の調子も考慮した上での大体の制作期間の目安”だけをお伝えする。

ー 材料費以上の金額のご依頼は基本的に受けていない。ご依頼主の条件に追われるようなことはしない。

好きなことを好きでいるために、楽しいことを楽しむために、自分の中にこうした工夫やルールを自然と築かれたからこそ「1回も、やめたいと思ったことはない」のだろうと感じました。

自分を中心に置いて、相手に真摯に向き合うということ

自分が子どもの頃に見た流山の風景を切り絵で残す活動は、その後切り絵行灯の製作に発展し流山本町地区内を中心に100基以上作られており、その活動や作品はテレビや新聞など多くのメディアに取り上げられました。まちの文化にも発展しているといえる息の長い活動は、まちづくりの景観形成に大きな貢献があったと国土交通省大臣賞も受賞されました。

こうして“自分のためにやっていたこと”が“まちのためにもなること”に変化していく中で、欲は出てこないのでしょうか。流山本町の入り口である流山駅にてmachimin(コミュニティスペース兼観光案内所)を運営している私は、切り絵や切り絵行灯を遠方から見にいらっしゃる方に何度も出会いました。まちの中にもささやかでしっとりした明かりが灯っており、飯田さんたちの切り絵行灯製作への想いに共感し、まちの盛り上げに協力しようと切り絵行灯を灯している店舗やお宅がたくさんあることが分かります。市の観光に貢献され、切り絵はまちの資源とされているので、「もっとこうしてほしい」という周りへの期待はうまれないものなのか、私は疑問を感じました。

ー やりたいからやっている、やりたいようにやる。無理してまでやることじゃない

自分にとって難しいことや苦手なことに時間を使うのではなく、好きなことや得意なことをやり進めたい、切り絵でもっとやりたいことがあるそうです。終始微笑みながら語る飯田さんを見ていたら、私の“こんなことをやってみたい”という気持ちががムクムクと湧き上がって来るのがわかりました。

“流山本町昔話会”をやってみたい…

私が運営するmachiminは、“やりたいからやる!が集まるギャラリー”でもあると考えています。流山に最近転入された方、地元の方、観光される方、に観光コンテンツにある歴史や美しさだけを見て欲しいのではなく、盛り上げようと協力する“地域の人たちの存在とその想い”、なにより“観光コンテンツは人が作っているということ”を知ってほしいです。(誰にお願いされたわけでもないのですが…笑)

ギャラリーでは切り絵展示・講座・GOODS販売だけでなく、流山本町の歴史や風景を少しでも残す取り組みをしてみたいと思っています。“流山本町昔話会”を開催し、流山本町に長くお住まいの方に当時の情景がよみがえるエピソードや懐かしい風景についてお茶を飲みながらゆったりインタビューし、そのお話からイメージできた風景を切り絵で表現したり、文字に整理して冊子にまとめたり、そんな取り組みができるのではないかとワクワク考えています。新しい観光コンテンツをみんなで一緒に考える場所に育てていけたらいいな、なんて妄想も膨らみます。

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